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漢方の欧米事情 Kampo in the World

最近、日本のアラフォー+の女性達と話していて、漢方の話をよく聞きます。


最近、調子が悪いから漢方飲み始めたよ。

漢方ってどう?興味がある。

処方してもらいたいんだけどどこに行ったらいい?

メノポースで、加味逍遥散飲み始めた。


あと友人の医師は、漢方医としての研究を始めたり。


私が東洋医学にどっぷりつかっているから、そういう話が耳によく入ってくるのか。

それとも、漢方、オトナ女子の間でちょっと流行っているのかな?


コロナ渦で大変な思いを(長い間)してた女子達が調子が悪くなり、

でも病院は行きたくなくて、あるいは強いお薬を飲むのには抵抗があったりして、

漢方薬ならいいかな?飲んでみようかな。。。みたいな?


いずれにせよ、漢方=東洋医学に興味をもってもらって、トライしてもらうのは嬉しい。

ので嬉々として説明したいけれど。。。実は私は漢方=中医薬学は只今欧州にて勉強中・修行中の身。Limitedな知識しかありません。が、漢方で一番大事な「診断パターン」を下す、という事については、鍼灸治療も原理原則が一緒のためできます。なのでハーブの名前云々をさえ大量に暗記できれば、どの症状にどの漢方が合うかを見極めるのはそんなに難しくはありません。(とか言いつつ、今暗記が大変でひーひー言ってるんですが!)

パリで各患者様に、ちゃんとハーブを処方できるようになるまでは、あと2年ほどかかりそうですが。。。


実は、日本の鍼灸師の資格では、漢方を扱えません。

ご存知の方は少ないかもですが、同じ東洋医学でも、日本だと、鍼灸か、漢方かで袂がきっぱり分かれてしまっています。

中国でも分かれてはいるけど、基本中医学を提供できるのはMD=医師なので、鍼灸=外科やフィジカルセラピー系、漢方・ハーブ=内科、みたくなっているようです。(私の知っている中国本土からの医師に聞いた話です。)


日本だと漢方は「基本」医師か薬剤師で、かつ漢方専門の勉強した人じゃないと処方できません。しかし、最近の法改正で、既にある処方(カスタマイズされていない)であれば、

一般OTC医薬品を販売することが出来る「販売登録者」資格で一般に流通されている漢方処方なら販売することができるようになりました。

なので、鍼灸師でかつ「販売登録者」の資格があれば、鍼灸治療しながら一般漢方薬の相談にもこたえることが出来、トータルな東洋医学ケアが出来ます。


日本における漢方の歴史は、ツムラさんAll About さん で読めますので省略しますが、中国の医学から上陸して来ていて、1500年くらい(!)日本人に寄り添って、日本化した中医薬学を漢方と呼びます。Kampoといえば日本の中医学ハーブ、と世界でも認識されています。まあ欧州ではあまり認知度ないですが(笑)。


でも、中国もそうですが、日本でも、ハーブは長い長い数千年の歴史の中で pragmatic にサバイバルしてきたハーブ=「効く」ものしか、生き残れません... the survival of the fittest です。で、昔の医師たちは、それらのいろいろな「効く」ハーブを、更に「優秀に」組み合わせ、検証し、試行錯誤して、さまざまな症状に対する処方を作り上げてきたのです。ですので、今日本で普通に売られている漢方処方は優秀で、ちゃんとした組み合わせをすれば、殆どの病気・未病パターンにも対処できちゃいます。ちゃんと体質や今の病理(未病であれなんであれ)に合った処方を飲めば、じわじわ効いてくると思います。

でも海外在住者には、漢方は、残念ながらなかなか手に入らないです。


なんでかというと、

1)漢方は上記で言ったように、日本では医師と薬剤師に限定されてきた。(しかも医師薬剤師のなかでも漢方医となっている人はほんの一握りです)

2)日本で医師・薬剤師資格を取っても海外では殆どの場合転用できない

3)よって海外に住む漢方医師・薬剤師はほぼゼロ=海外でサプライ窓口がない。

という訳です。


しかしながら、漢方も含め東洋医学=中医学については、欧州はまだまだ発展途上です。…逆に、あまりにも知られていないため、漢方ハーブに対する法や規制がないのです。

そのため、処方しようと思えばできちゃうという現象があります。(注:西洋ハーブを処方する際には欧州では、医師、薬剤師、ホメオパシイ医師や栄養士など公的資格が要ります。)


あ、でももちろん、中医学専門薬局で処方を組んでもらう際には、最初に登録が必要で、その際には教育・資格などの証明を求められますので、誰でもが好き勝手になんでもできる訳ではないのです。が、漢方によくある処方、例えば上記で出た「逍遥散」など、カスタマイズされていない「ありもの処方」であれば(十分優秀ですよ)、これらは買おうと思えば勝手に自己責任で買え、またお勧めすることもできちゃう。。という訳です。

東洋医学がもっと知られるようになれば規制など出来てくると思いますが、今は、欧州ではなんとも不思議なパラドックスが存在します。

私は漢方を勉強したくて、欧州で漢方を教えている先生をむちゃくちゃ探しに探しました!

しかしどなたも見つけることが出来ませんでした。。。

なので今、英語で履修できるオランダの大学で中医薬学を勉強しています。


でも私が長年住んだアメリカなどでは、かなりうるさく試験・資格が求められます。

そのうちアメリカに帰る予定の私は、それに向けて、欧州の大学コースで中医学ハーブを取っているという訳です。大学はアムステルダムで、パリから3~4時間かかるので、現地のクリニックにもうすぐインターンとして宿泊つきで通い始めます。


アメリカに戻ったら中医学ハーブのアメリカ国家試験(board exam)を受け、漢方含めハーブの処方も出来るようになり、やっと鍼灸と漢方の両方できる東洋医学医師となる訳です。

 

日本の漢方処方と、中国の処方の違いを見つけたら、お知らせしていこうと思います!

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